「浅間の馬子」というタイトルになっているが浅間の馬子のことではない。

浅間山麓には古くから馬子唄として「小諸馬子唄」があるが、「浅間馬子唄」というのはない。

星野温泉に逗留した時浅間の馬子が唄うとすれば、落葉松や白樺の林が続く山道の中、馬の手綱を引きながらこのような文句で唄ってほしい…という想いで書いたと思われる。

落葉松に萌黄の雨が降り、白樺に薄雲の七重がさが寄り添うように差されている、宵の辛夷の花に一つ星がまばたく。

“ホイホイ”“ドウドウ”馬子の声も聞こえてくる。

坂本良隆はNHKから海外放送のための日本歌曲を依頼され作曲。墨絵のような旋律に日本民謡独特の小節を挿入、見事に白秋の想いに応えている。

風雅のおもむきある名曲といえよう。